Web3.0 もとい Web3
はじめに
2021年はビットコイン、NFTなどのキーワードが一般向けのニュースにも登場し、暗号資産取引所のTVCMが流れるほど仮想通貨(やっぱり暗号資産より合ってるように思うので以降こちらで統一)が盛り上がっている。
個人的に昨年頃から仮想通貨に興味を持ったということでバイアスが働いていることは否めないが(事実、2017年の仮想通貨バブル時は全くと言ってよいほど興味がなかったのではっきり言ってバブルと気づいてすらなかった)、仮想通貨のことはもちろん、エンジニアの端くれとしてブロックチェーンそのものの知識をもっと学びたいと思い、ちょいちょいニュースを拾ったり、いくつかのYoutubeで情報収集をしているので、学んだことについて時々メモとしてアウトプットすることで知識定着をさせたい。
・・・と言いつつ、この記事自体会社の勉強会ネタの下書きとして書いてから80日以上寝かせてしまって今に至る。。
寝かせている間にいつの間にかWeb3.0、というかWeb3がめっちゃバズワード化していて、今この記事を上げると完全に乗っかっただけにしか見えないという始末。まぁ自業自得なのだけれど。 とはいえこのまま寝かせるのはあまりにもったいないのできちんと晒すことにする。
ブロックチェーンというよりWeb3.0
仮想通貨やブロックチェーンのことを学び始めると、Web3.0というキーワードを目にする。 ブロックチェーンのことに興味がなくても、IT業界に関わる人間にはピクっとする言い回しだろう。 Web3.0と聞いて当然のように想起されるWeb1.0やWeb2.0を含めて、Web3.0とは何かを解説されている記事は数多あるが、この記事でも10分程度で人に説明できる程度の内容にすることを目的にまとめてみたいと思う。
【前提】Web1.0、Web2.0 とは
Web1.0
Web2.0という言葉ができてから勝手にそれまでの時代を1.0と命名されてしまい、どんな時代だったかを後付けされた格好だが、一般的には ティム・バーナーズ=リー によって考案されたワールドワイドウェブが始まった1989年から2000年代初期までの、インターネット黎明期におけるウェブ構造をWeb1.0と呼んでいる。
特徴としては以下のようなところ。
- HTMLのみのシンプルな静的サイト(「ホームページ」)
- 一方向性の発信であり、利用者にとってはRead Only
- ダイヤルアップ接続による低速サーフィン (ピーーーーーガーーーーー)
特に最初の方は一部の人の趣味の領域にとどまっていた時期が長かったように思う。
ちなみに、ティム・バーナーズ=リーが以下のように考えていたことは改めて興味深い。
彼は初期のウェブコミュニティを「分散型(Decentralisation)」、「無差別(Non-discrimination)」、「ボトムアップ設計(Bottom-up design)」および「普遍性(Universality)」などと形容しており、「ウェブ上の投稿にはいかなる中央組織の許可も要らず、(中略)見境のない検閲および監視からの開放を意味している」述べています。
(Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット より)
Web2.0
今もなお続いている現代のインターネットがこの状態。2005年にティム・オライリー(Tim O'Reilly)によって提唱され、言葉としては2年ほど流行った。
↓日本語訳
特徴は上記日本語訳記事中にある、この"ミーム・マップ"と呼ばれるものに全て詰め込まれているが、
おそらく当時をよく知っている人でもその頃は表面的な理解しかできなかったのではないかと思うが(自分もそう)、今1になって改めて眺めると未来予想図を振り返るようで面白い。 「単一デバイスの枠を超えたソフトウェア」「データは次世代のインテル・インサイド」などは2005年当時に明言しているは凄い。
「ソフトウェア・リリースサイクルの終焉」で言及されているソフトウェアがモノではなくサービスとして常にアップデートされ続けるという概念については、SaaSが普及してコンシューマ向けゲームでさえアップデートされ続けるのが普通となる現状を見ると、「永遠のベータ版」という言葉が死語になったとはいえ、なるほどよく言い当てられている。
ただ、SaaSを提供している企業の開発現場からすれば、リリースサイクルはなくなったどころか短期化されてより厳しくなったという方が正しい。
既に成熟されていると言っても良い、Web2.0がどんな時代であるかを挙げるならこんなところ。
余談
ティム・オライリーが提唱してから約1年半後(遅い)の2007年4月に DoCoMo2.0 という広告が登場して以降、2.0、いや x.0 という数字が完全にキャッチコピー化していろんなところで使われるようになった。
この「なんとか2.0」ブームもとうの昔に下火になったかと思っていたが、こんなまとめもあり結構最近まで乱用されていたのだなぁというのを再認識。
Web2.0での課題
Web2.0によってインターネットは社会のインフラになり、シームレスに生活に浸透したといえる。しかし、Web1.0時代にはなかった問題が現実社会に投げかけられることになる。
Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット にあった以下3点を取り上げる。
個人情報・プライバシー問題
個人情報がGAFAMなどのプラットフォーマーに集中し、年齢・性別・職業などの基本属性はもちろん、友人関係や個人の興味・嗜好などのデータが蓄積され、分析・売買されてこれら巨大企業の収益の源泉となってきた。これはGoogleやFacebookを始めとして多くのWebサービスが無料で利用できる背景ともなっているわけだが、言い換えると個人情報を対価として支払っているということである。
もちろん、マーケティング利用としての分析・売買は基本的に個人の識別などできない状態にして統計的に処理するのが一般的なので、たとえターゲティング広告に追われていても心配をする必要などないのだが、政治利用されているという事実がこの問題の深刻度を物語る。
例)
- スノーデン事件(2013年6月)
- ケンブリッジ・アナリティカ問題(2018年)
そもそも、大手プラットフォーマーは望んでいなくてもその国の政府に協力しているのが当然と考えるべきである。
単一障害点
AWSやGCPなどのIaaSを使うことで一般企業にも耐障害性の高いシステムを構築するのは一昔前と比べて遥かに容易に、低コストで実現できるようになり、大抵のSaaSプラットフォーマーのインフラもIaaSで構築されるのが普通になった。
ただ、自前で構築するのに比べたらもちろん耐障害性は高いはずだが、IaaSやSaaSプラットフォーマーに依存している企業が多ければ多いほど、そのプラットフォーマー自身がサービス障害を起こした場合のビジネス・社会への影響が甚大であることが浮き彫りになる。
また、ある日突然そのプラットフォームでアカウントが停止された場合、単なる障害対応では済まない。 ビジネスの場合の深刻さも容易に想像しうるが、個人としてもGoogleアカウントをBANされたら本当に困るし、ハックされてアカウントデータが流出した、と言われたら青ざめる人は大量にいる。
ネット検閲
ここはそのまま引用させてもらうと、
インターネットが中央集権的で、一部の組織によって管理されているということは、その中央組織の承認がなければ、インターネット上での活動に制限が生まれ#しまうということを意味しています。例えば、あるSNS運営企業が、自社プラットフォームに書き込める内容に制限を設けた場合や、国や政府が閲覧できるウェブサイトを限定した場合、それは表現の自由に抵触する可能性もあります。
実際21年1月にトランプ元大統領のTwitterアカウントが永久凍結された際には、これはTwitter社による人権侵害であるという主張と、特に元大統領の発言を危険とみなした場合、Twitter社が利益追求のために元大統領のアカウントを永久停止するのは当然の権利だという主張が対立し、議論が巻き起こっています。
(Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット より)
これらの問題の根幹は共通しており、Web2.0が「中央集権型のWeb」であることに他ならない。
ではWeb3.0とは
こうした課題を受けて、ではWeb3.0とはどんなものなのか?
手っ取り早い概要理解はこちら
以下の動画((5つに分割されているが、1〜3あたりまでが特に参考になる))がすごくわかりやすいので、これを観るだけでいいかも。
自分のための説明
Web3.0の明確な定義はないが、以下、Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット にまとまっているものをもとに紹介する。
Web3.0は先述したWeb2.0のデータ関連の課題を解決するものとして構想された。
中央集権型であるWeb2.0に対し、Web3.0は非中央集権型で自己主権型のWebであるとされる。
(出典:Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット ※画像の著作権は Fracton Ventures株式会社))
インターネットはもともとデータを管理(管理=状態管理、検証)するようにはデザインされておらず、あくまでやりとりを前提としていたものだったため、複製・改ざんなどにより検証できなかったり、中央管理組織によって管理する必要があったりした。
これが、ブロックチェーンなどの分散型技術によってインターネットに検証可能性という特性を持たせることができ、中央管理組織を介する必要がなくなるというのがWeb3.0で実現される世界観である。
(出典:Web3.0で何が変わる? ブロックチェーン技術が実現させる新しいインターネット ※画像の著作権は Fracton Ventures株式会社))
Web3がもたらすもの
Web3.0では、以下のような利点が得られる。
- ユーザー自身がデータ所有権を掌握
- 単一の中央管理者が存在していないため、ユーザーが自身のデータ管理権を掌握でき、データがユーザーの許可なく利用されることがない
- P2P取引による仲介組織の排除
- 単一障害点の排除
- 分散的な方法でネットワークが構成されてることで技術的により堅牢なシステムになる
- ビットコインは2009年1月3日に運用開始されてから今まで停止したことがない
- 検閲耐性
- いかなる組織及び機関の承認なしに誰でも参加可能
- 検閲・制限する組織も存在しないため地理的条件や思想などで差別されず利用可能
Web3.0のトレンド
Web3.0領域ではいくつかの大きなトレンドが起きている。
特に前者2つについては2020-2021年に大きく盛り上がりを見せており、ニュース記事等で目にした方も多いことと思う。
※ スマート・コントラクト ある契約・取引について「特定の条件が満たされた場合に、決められた処理が自動的に実行される」といった、契約履行管理の自動化を指す
Web3.0のプロジェクト・組織
Web3.0を実現するべく取り組んでいるプロジェクトは数多あり、どんな分野があるのかを把握するのすら大変。 こちらは少し古いカオスマップ(2018年)。
https://medium.com/cryptoage/%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AFweb3-0%E3%82%92%E6%81%90%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-35d849fa1300medium.com
いろんなプロジェクトがあるが、まずは Web3 Foundation という組織があることを知っておいた方がよいか。
- Web3 Foundation
- 分散型ウェブ用アプリケーション開発を促進する世界最大級のブロックチェーン財団
その他、Technical分野で見ていきたいところ。
- Ethereum
- IPFS(InterPlanetary File System)
- ICP(Internet Computer Protocol)
- 世界中の独立したデータセンターから提供される計算リソースを使って分散型”インターネット・コンピューター”を作りAWSやGCPのような特定企業のクラウドコンピューティングサービスからの脱却を目指す
所感
Web3.0という言葉を最初に聞いたときは2.0のマーケティング的な使われ方を連想して十中八九バズワードだろうと想像していたが、すごくしっかりした、かつ妄想ではない現在進行系の未来予想図を積極的に実現しようという取り組みだった。
この分野は新しい用語、技術が多く、覚えるのが非常に大変だが、動きが活発で面白い。 個人的にはこれまで巨人の肩に乗っかってきたコンピューティングリソースが、Web3.0でどういう形で確保されるようになっていくのかなどに興味があるので、上に挙げたプロジェクトについては今後もう少し理解したい。
参考にしたもの、なりそうなもの
https://prsarahevans.com/page-548/web-3-0-2/prsarahevans.com